3.5. 進化との関連 : 進化と人類のラクトース不耐症
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アフリカ系米国人やアメリカ原住民の80%、アジア系米国人の90%は不耐症であるが、北欧系の米国人には10%しかいない
ラクトース不耐症には遺伝的原因がある
進化的観点からは、北欧の人たちはラクトースを処理できる能力をもつことで、その祖先の人よりも有利であったため、この人達にとってラクトース不耐症がまれであったと理解できる 比較的寒冷な気候では収穫は年に1回だけ
したがって、動物はこの地域の初期人類にとって主要な食料源
家畜が北欧で最初に飼いならされたのは9000年前
ミルクや他の乳製品を1年中摂取するような生活をすることで、一生を通じて活性の高いラクターゼ遺伝子をもった人たちが自然選択で生き残ったのであろう
乳製品が必須でなかった文化では、ラクターゼ遺伝子の働きを抑え、必要のない酵素を合成しないことはより効率的であっただろう
研究者たちは、北欧のラクトース不耐症の遺伝的変異が、乳牛群を飼育する他の文化でも起きているかもしれないと考えた
2006年の研究では東アフリカの46民族のラクトース不耐症と遺伝子との関係を比較した
その結果、別の3つの遺伝的変異によってラクターゼ活性を一生を通じて保持できることが明らかにされた
これらの遺伝的変異は約7000年前に起き、ちょうどこの時期に、考古学的証拠はアフリカのこの地域で家畜化が始まったことを示している
ミルクを飲むことで寒冷気候を生き延びたり、喉の乾きを癒すという生存に有利になる遺伝的変異はこれらの初期人類に急速に広まった
このように人類の進化と文化の歴史は、遺伝子、つまり大人になってもミルクを飲み続けられる能力として刻まれている
訳注: 本書ではラクトースを消化できない大人を不耐症としているが、進化的にはこれが正常型といえる